単著専門書『伊勢物語相補論』


大学院生の頃から17年間一貫して研究してきた伊勢物語研究の成果を、 やっと本にまとめることができました。 学術誌や学術書に発表してきた諸論文( 「研究業績一覧」参照)を大幅に補訂し、 体系的に組みあげました。 成立論に代わるべき論を打ち立てるという大きな目標を掲げ、 成立論を批判したうえで、章段どうしのつながりをより重視した、より積極的に仕掛けていく読みを展開しました。 単なる周辺論ではありません。 書名は、『伊勢物語相補論』。 平成15年9月28日、おうふうより刊行。 税別14,000円、A5判342頁、ISBN4-273-03300-3 C3093。

気軽に買っていただけるような値段にはならなかったのですが、 広く読んでもらうための方策を用意していますので、 興味のある方は、 こちらの「閲覧方法」をご覧ください

また、
初版には、訂正すべき箇所があります。 こちらの「正誤表」および「旧稿の訂正と補足」もご覧ください

全体の構成は、次のような三部構成になっています。

第一部の「伊勢物語成立論批判」では、今でも支持されることが少なくない、片桐洋一のいわゆる三段階成立論を批判します。 まず、第一章に概括的な序論を置きます。この章は、第一部のみならず、第二部の案内も兼ねます。 それ以降が各論で、成立論の論法・論拠を詳細に検討・批判します。 第二章は、伊勢の段階分けの基準となっている外部資料(歌集)の考察。 歌集の編纂態度を調べると、当時にも業平歌を選別する意識があったことがわかり、 必ずしも、伊勢が段階的に成長増益していったと考えなくてもよくなります。 第一節は享受論として楽しめますし、 第二節の終わりには、結構面白い新見を加えられたのではないかと思います。 第三章では、成立論にとって新たな可能性をもつ狩使本伊勢が資料として使いものになるかを考察し、 資料としては今一つ、という結論を出しています。 第四章は、成立論の大きな傍証となっている指示語と係助詞の考察。 傍証たり得ないことを、国語学的に論じています。

第二部は、成立論に代わるべき論として、「伊勢物語相補論」という読みを提唱します。 本書の中核です。 相補論とは、成立論的な時間軸をもち込まない、構成論的・テクスト論的な読みで、 具体的・網羅的に読み通す点に特徴があります。 かみくだいて言えば、どんなにちがう章段どうしでも、成立事情を云々せず、 とにかく縦横につないで、どう読めるかを考えるものです。 第一部同様、やはり、第一章には概括的な序論を置きます。 第一節がメインの総論で、読みの面からの成立論批判も併せて行なっています。 第一節が巨視的なのに対し、第二節は微視的です。 同じく、成立論批判も引きずっています。 第二章では、伊勢の全章段について、配列順に読みを示しています。 「〜昔男」というタイトルのシリーズで、昔男の一代記として読めます。 シリーズなので、全節通して読んでほしいです。 第三章では、それらの読みを、検算の意味を込めて、テーマ別に組み直しています。 今度は配列順にではなく、超章段的に、 第一節ではミヤビを、第二節ではイロゴノミをテーマに読んでいます。 なお、上記第二章第一節および第三章第一・二節にも、成立論批判は入っています。

第三部には「その他の伊勢物語関連論文」を収めていますが、「その他」 と言っても、決して第一・二部と無関係な論文ではありません。 第一章の章段別解釈は、第二部の読みを支えるものです。 第一節で二三段第二・三部、第二節で八七段をとりあげています。 第二章の異本伊勢物語絵巻系新出資料の紹介も、第一部の狩使本伊勢論と無関係ではありませんし、 第三章の書評も、 第二部第二章における私の読みのプライオリティー・オリジナリティーを明らかにする意味で、 存在意義があると考えます。特に前者には、今後異本伊勢物語絵巻系資料を論じる際必ず知っておかなければならない指摘があります。

では、以下に「目次」をあげておきます。なお、巻末には、同僚の英文学者に訳してもらった「英文目次」も付載しています。

目次 2〜4頁
第一部 伊勢物語成立論批判
第一章 伊勢物語成立論批判序説 7〜33頁
第二章 歌集の採歌態度
―その典拠伊勢物語との関係―
第一節 新古今集・新勅撰集の採歌態度
―その典拠伊勢物語歌の〈業平歌らしさ〉―
34〜47頁
第二節 現存業平集の採歌態度
―その典拠となった狩使本伊勢物語の二部的構造との関係―
48〜66頁
第三章 資料としての狩使本伊勢物語の質―その断片に見る新しさ― 67〜85頁
第四章 伊勢物語の語り手は変貌しているか―ソ/コ系指示語と係助詞ナムをめぐって― 86〜112頁
第二部 伊勢物語相補論
第一章 伊勢物語相補論序説 第一節 伊勢物語相補論序説T―章段単位での考察― 115〜136頁
第二節 伊勢物語相補論序説U―章段内の部分単位での考察― 137〜152頁
第二章 配列順伊勢物語相補論 第一節 〈原体験〉へと回帰する昔男
―伊勢物語一〜二○段に見る〈心〉と〈かたち〉の二元論―
153〜173頁
第二節 イロゴノミとして成長する昔男
―伊勢物語二一〜三七段に見る積層構造―
174〜186頁
第三節 〈連帯〉に安息する昔男
―伊勢物語三八〜四八段に見る〈孤高〉からの脱却―
187〜197頁
第四節 復活する昔男
―伊勢物語四九〜七六段に見る二度の〈再生〉―
198〜210頁
第五節 〈老い〉を受け入れる昔男
―伊勢物語七七〜九五段に見る現実との折り合い―
211〜225頁
第六節 すさみゆく昔男
―伊勢物語九六〜一一四段に見る自暴自棄的荒廃―
226〜241頁
第七節 必然的な死を迎える昔男
―伊勢物語一一五〜一二五段に見る妥協・諦観・終焉―
242〜254頁
第三章 テーマ別伊勢物語相補論 第一節 伊勢物語の〈モラル〉
―美的規範あるいは補償行為としての〈ミヤビ〉―
255〜267頁
第二節 一人の昔男―伊勢物語のイロゴノミ― 268〜278頁
第三部 その他の伊勢物語関連論文
第一章 伊勢物語の章段別解釈 第一節 伊勢物語二三段第二・三部の解釈 281〜294頁
第二節 伊勢物語八七段の解釈 295〜305頁
第二章 慶大蔵『伊勢物語繪詞』について―新出狩使本資料の紹介と検討― 306〜327頁
第三章 菊地靖彦『伊勢物語・大和物語論攷』の書評 328〜333頁
あとがき 335〜340頁
Table of Contents 341〜342頁
著者紹介・奥付
 

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