愛知東部は、かつて「三河の国」と呼ばれていました。平安時代に成立した伊勢物語の9段にある東下りの場面では、 「三河の国八橋」で在原業平とおぼしき主人公=昔男が歌を詠んだ、とあります(古今集410番にもあり)。昔男は、都への未練を残しつつ東下りの旅をつづけ、当地(知立市)まで来て次のような歌を詠みます。 からごろも きつつなれにし つ ましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ 教科書にもよく載っている有名な歌ですから、ご存じの方も多いでしょう。各句のはじめをつなぐと「かきつばた」になる、「折句」という技法が使われています。「三河の国八橋」で「かきつばた」が「いとおもしろく咲」いていたところから詠むことになった歌で、訳すと、「馴染んだ唐衣のように馴れ親しんだ妻が都にいますので、はるばるこんな田舎まで旅をして来たものだ、と悲しくなるんです」となります。実際に業平が当地まで来たかについては、説が分かれていて断定できないものの、当地には関連する旧跡が残っています。以下、その旧跡をごくごく簡単に紹介します。 なお、アクセスは、名鉄三河線「三河八橋」から徒歩8分です。名鉄電車・バスについては、名古屋鉄道の「ダイヤ・運賃検索」をご覧ください。名鉄名古屋本線「名鉄名古屋」からだと、「名鉄名古屋―特急20分→知立で乗り換え―普通6分→三河八橋」となります。 また、ついでに言っておきますと、Network2010による動画「八橋かきつばた園(知立市)」は、よくまとまっていてわかりやすいですよ(3分)。 さらに、またまたついでに言っておきますと、伊勢物語9段について詳しく学びたい方には、私の「伊勢物語全段動画講義第4回(7-9段)」もあります(42分)。もしご覧いただければ、誠に嬉しい限りでございます(「伊勢物語全段動画講義」の目次ページは、こちら)。 |
写真&解説 | |||
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付記 知立公園花しょうぶまつり&楽聖宮城道雄先生供養塔知立市では、上記「史跡八橋かきつばたまつり」につづき、「知立公園花しょうぶまつり」が行なわれます。知立市観光協会公式サイトに紹介されていて、観光パンフも閲覧可能(こちら)。会場の「知立神社」外苑は、名鉄名古屋本線「知立」から徒歩15分です。なお、「愛知教育大前→知立」のバスで帰る途中に寄る場合は、「いわせ外科クリニック」で降りると、バス進行方向に案内標識があります。徒歩5分。ここの花しょうぶは、昭和になって明治神宮から下賜されたもので、3万株あるそうです。見頃は6月10日前後で、期間中には、知立神社宝物展・からくり人形展などが開催されます。こちらも、大勢の観光客で賑わいます。刈谷市には、JR東海道本線「刈谷」駅付近で列車から転落して他界された箏曲家・作曲家、宮城道雄先生の供養塔「楽聖宮城道雄先生供養塔」もあります。代表作「春の海」を知らない人は、おそらくいないでしょう。「切手と文学」というブログの記事「宮城道雄と刈谷駅(1)供養塔までの道のり」・「宮城道雄と刈谷駅(2)供養塔に刻まれた点字の楽譜」が参考になりますが、一応説明すると、次のようになります。 |
@「刈谷」駅南口を出る |
A左手に進む(名鉄三河線「知立」方面・東海道本線「豊橋」方面と平行するように進む) |
B「刈谷市交通児童遊園」が右手に見える地点で、東海道本線をくぐる道とぶつかる |
C左折し、そのくぐる道のすぐ左横に沿ってある坂道を進む |
D坂道をのぼると、左手に「楽聖宮城道雄先生供養塔」がある(「刈谷」駅から徒歩10分) |
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