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◆前置き◆ |
今なぜ伊勢物語なのか 伝統の重々しいオーラをまとう古典文学は、一つの完成形と見なされ、受動的に承るべきものととらえられているのではないでしょうか。しかし、古典文学のなかには、読者自らが完成させなければならない、能動的に創るべきものもあります。 それが、伊勢物語です。 後述するように、伊勢は、章段間のつながりを見出しにくく、説明不足でもあるため、どの章段とどの章段をどうつなぐか考えながら、説明不足な部分に意味を付与していかなければなりません。章段ごとの不統一性に対しても、それを大目に見ながら、統一的世界をさぐっていく必要があります。まさに、伊勢は、読者自らが能動的に創るべき古典文学なのです。とすれば、ネット上で様々に自分を発信するようになった現代には、ピッタリと言えるかもしれません。 また、私は上代の山部赤人や近世の箏曲地歌歌詞も専門としていますが、最も得意なのは中古の伊勢です(「自己紹介」参照)。赤人・箏曲地歌では単著各一冊(専門書『万葉赤人歌の表現方法』・注釈書『箏曲地歌五十選』)なのに対し、伊勢の単著は専門書『伊勢物語相補論』 ・入門書『伊勢物語入門』・なぞり書き本『読めて書ける伊勢物語』と三冊あります。入門書に相当するネット上コンテンツも、その三冊の持論を特選した読みもの「伊勢物語対話講義」と、1-37段を平易に解説した読みもの「伊勢物語で遊ぼう」があります。平成22年は動画形式の「山部赤人動画講義」をつくりましたから、23-24年はその姉妹編を伊勢でつくろうというわけです。「対話講義」「遊ぼう」と連動させ、範囲も全段を網羅します。おそらく、これまでの集大成になるでしょう。オールセルフプロデュースでできるのも、利点です。 時代の流れからしても、伊勢の能動的な読み=つなぎ読みを示して、古典文学の新しい楽しみ方を周知したいところですし、個人的モチベーションからしても、得意分野の集大成的コンテンツをつくっておきたいところです。 |
つなぎ読みでなければならない理由 伊勢は、百余りの章段の集合体です。 各段冒頭は「昔、〜」ではじまり、リセットを繰り返すので、つながりがブツブツに切れているような印象を受けます。 また、在原業平(ありわらのなりひら、825-880) とおぼしき主人公が一応いるものの、実在の業平と関係しそうな章段もあれば、しなさそうな章段もあって、設定はきわめて不統一です。 そもそも、伊勢は一人の作者が一時期に書いたものではありませんから、設定はもとより、各段の長さ・文体・歌の素性など本当にバラバラです。 そして、言葉足らずだったりおぼめかすだけだったりして説明不足なため、スカスカにも感じられます。 近世において古典文学のなかの古典文学として親しまれてきた伊勢が現在源氏物語に大きく水をあけられてしまったのは、このブツブツ・バラバラ・スカスカが原因と言っても過言ではないでしょう。 しかし、ブツブツ・バラバラ・スカスカであることが短所でしかないかと言えば、そんなことはありません。ブツブツに切れて連続したストーリーが見出せないなら、読者自らがどうつなげられるか考えればいい。バラバラに感じられるほど不統一で作者の意図が見えないなら、読者自らがどう読めるか考えればいい。説明不足でスカスカなら、 読者自らがどんな意味を付与できるか考えればいい。要は、前述のとおり、能動的に創る、すなわち、深読みすればいいだけの話です。完成された既製品としてではなく、組み立てることを楽しむキットとしてとらえられれば、伊勢は、実に頭を使わせてくれる面白い古典文学となり得ます。つまり、伊勢がブツブツ・バラバラ・スカスカなのは、一見短所に見えて、実は、長所を引き出すためにそうあらねばならない条件だったわけです。 そんな長所があるのなら、楽しまない手はありません。私が提唱しているつなぎ読みは、伊勢に適した、組み立てることを楽しむ読み方です。その面白さを、ぜひつなぎ読みで堪能してみてください。大学の講義や高校の模擬授業、あるいは、一般向けの各種講義に活かすべくつくってあるため、サラッと雰囲気を感じとりたい方には無用の長物でしょうが、深く学びたい方や教養を高めたい方にはいいかもしれません。 ★上記のことは、「対話講義U上」および「遊ぼう第2回」に書いてあります。 ★ なお、拙稿「陰影をおぼめかす表現方法−『伊勢物語』を統一体として読むことの可能性−」および「婉曲的表現方法とその遵守−『伊勢物語』を統一体として読むことの必要性−」を読んでもらえば、伊勢を統一体として読むことの可能性・必要性がよくわかるかと思います。 |
内容的にどんな点が現代に通じるのか 伊勢は基本的に恋物語ですから、恋愛の諸相が多く描かれます。 主人公の相手は、三つに大別されます。一つ目は、共感が根底にある同朋=本命タイプ。二つ目は、共感のない高嶺の花タイプ。三つ目は、同じく共感のない、否定・制裁すべきタイプ。そして、主人公の対応は、相手や状況に応じて変わります。相手や状況に応じて対応を変える点は、現代人も同じです。 恋愛ならぬ友愛の場面においては、紀有常に共感し、彼の生き方を指標とします。 主人公にとっては、共感できるかが一大関心事のようです。 関連して言えば、政治的敗者である貴人・親族への好意的な言動や敬慕の情が目につくのも、共感が根底にあるからでしょう。 似た者どうしが寄り添う。昔も今も変わらない人間模様です。 そして、伊勢は、後半の斜陽編に入ると、前半の青春編からの落差が認められるようになります。 現実の壁に直面しつつ現実を受け容れて生きるとなれば、かつての奔放な主人公像が変質するのは理の当然。 遂には、晩節を汚しながら死んでいきます。そんな落差のある人間像も、現代に通じるはずです。 ★「対話講義U下」には上記第一段落の三分説や第二段落の有常について書いてあり、前者は「遊ぼう第4回」、後者は「遊ぼう第8回」にも書いてあります。第三段落の落差については、「対話講義Z上」が参考になるでしょう。 |
◆予定表◆ ★実際の進度に応じ、予告なく変更する場合があります。 |
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タイトル | とりあげる章段 ★長い章段は二or三分し(@ABは第一・二・三部をさす)、 朗読・解説も各部ごとに行なう。 ★( )内の章段・歌は、参考としてあげるだけ。 |
備考 ★「伊勢物語対話講義」と「伊勢物語で遊ぼう」は、予習・復習に活用できるので、ぜひご一読を。 ★★は全体的なもの、★は当該章段に関するもの。 |
第1ブロック 1 5/28(47分) 再生 ![]() |
理想像が刷り込まれる、没落の地での原体験 | 1(16@,源氏物語若菜上,東屋),2(9A) | ★「今なぜ伊勢物語なのか」 ★「つなぎ読みでなければならない理由」 ★「内容的にどんな点が現代に通じるのか」 ★1段で奈良を舞台にはじまる理由(「対話講義U中」) ★1段「いとなまめいたる」の訳し方と大きなビジョン (「対話講義U中・下」&「遊ぼう第3・4・7・8回」) ★伊勢物語のミヤビと源氏物語のミヤビに関する補足説明 |
2 6/4(33分) 再生 ![]() |
困難な状況下、高嶺の花を想う | 3(1,2),4(5,6@A,15.16@) | ★1-2段/3-4段に見る陰/陽および内面/非内面 (「対話講義U下」&「遊ぼう第3回」) ★二条后を本命として読まない理由 (「対話講義U下」&「遊ぼう第4・6回」) |
3 6/11(52分) 再生 ![]() |
イロゴノミの威力を発揮するも、結局挫折 | 5(1,2,3,4,15.16@),6@A(10) | ★1-2段/5-6段に見る陰/陽および内面/外面 (「対話講義U下」&「遊ぼう第3回」) ★二条后を本命として読まない理由 (「対話講義U下」&「遊ぼう第4・6回」) ★三段階成立論に従うことの危険性 (「対話講義T・U上」&「遊ぼう第5回」) |
4 6/18(42分) 再生 ![]() |
東下りして知る、自らの都至上主義 | 7,8(14),9@AB(2) | ★楽しむことのない東下り(「遊ぼう第7回」) ★9段@の舞台に関する紹介 (「三河八橋の伊勢物語旧跡案内」) ★富士山に無感動なのが普通でないことの補足説明 (「山部赤人動画講義V前半 ・後半」) |
5 6/25(34分) 再生 ![]() |
東国では、本気になれる相手が見つからない | 10(5,6A,源氏物語浮舟),11,12(4,6@) | ★田舎女に馴染めず楽しむこともない東下り (「遊ぼう第4・7回」) |
6 7/2(43分) 再生 ![]() |
東国に馴染めずじまいで、帰京宣言も出る | 13(10,11,12),14(8,9@,63@A),15(2,6A,16@) | ★田舎女に馴染めず楽しむこともない東下り (「遊ぼう第4・7回」) ★つなぎ読みのルール(「対話講義U上」) ★14-15段に関する許容し難い読みと内面/外面論 (「遊ぼう第7回」) |
7 7/9(66分) 再生 ![]() |
帰京して友達と再会し、原点回帰&自己確立 ★1-16段総集編 |
16@A(1,2,6A,14,15,63@A,82AB,83A, 源氏物語橋姫,東屋) 1-15段を大まかに |
★さらに16段まで引っ張れる内面/外面論 (「遊ぼう第7・8回」) ★16段に見る原点回帰の円環性 (「対話講義U下」&「遊ぼう第4・8回」) ★16段@「三代の帝」に関する補足説明 ★源氏物語にもある伊勢物語的ミヤビに関する補足説明 |
第2ブロック 8 7/16(68分) 再生 ![]() |
都会の空気に触れた後、奈良再訪で原点再回帰 | 17(16@A,38),18,19,20(1,2,23A) | ★一通りつないで読める17-20段あるいは17-19段 (「対話講義V中・下」&「遊ぼう第9回」) ★20段に見る原点再回帰の円環性 (「対話講義V下」&「遊ぼう第10回」) ★共感できる同朋=本命タイプが登場する20段 (「遊ぼう第4回」) ★一通りとは限らないつなぎ読みの自在性=可変性 (「対話講義V」) |
9 7/23(39分) 再生 ![]() |
相手まかせの優柔不断なひ弱さと、単純な力強さ | 21@A(23@AB,24),22 | ★21段/22段に見る行動力の弱さ/強さ、および、21段/ 22段と23段@A/B,24段の積層構造 (「遊ぼう第11回」) |
10 7/31(59分) 再生 ![]() |
対照的に描き分けられる強さと弱さ、ミヤビとヒナビ | 23@AB(1,16@,20,21@A,22) | ★共感できる同朋=本命タイプが登場する23段@A (「遊ぼう第4回」) ★23段@A/Bに見る時間に対する耐性の強さ/弱さ、お よび、21段/22段と23段@A/B,24段の積層構造 (「遊ぼう第11回」) ★23段ABにおける一つの答に決めるべき箇所 (「対話講義W」&「遊ぼう第12・13回」) |
11 8/14(49分) 再生 ![]() |
都人として甦り、待てなかった田舎女におさらば ★17-24段総集編 |
24(10,12,14,15,21@A,22,23@AB) 17-23段を大まかに |
★24段に見る時間に対する耐性の弱さ、および、21段/ 22段と23段@A/B,24段の積層構造 (「遊ぼう第11回」) ★主人公に執着する田舎女/田舎女に執着しない主人公 (「遊ぼう第14回」) |
第3ブロック 12 8/21(60分) 再生 ![]() |
イロゴノミ修行の厳しさに、スランプ突入 | 25(5,24,古今集622-623),26(4,6),27,28,29 (76),30,31,32,33(15,87B) |
★一気につなぎ読める25-33段のマイナー章段 (「遊ぼう第15回」) |
13 8/27(57分) 再生 ![]() |
堕ちきったがゆえの、スランプ脱出 ★25-37段総集編 |
34,35(万葉集763),36,37(25) 25-33段を大まかに |
★一気につなぎ読める34-37段のマイナー章段 (「遊ぼう第15回」) ★一通りとは限らないつなぎ読みの自在性=可変性 (「対話講義V」) ★恣意的に感じられて当然なつなぎ読みの本質 (「対話講義Z下」) |
第4ブロック 14 9/4(54分) 再生 ![]() |
気のおけない友達とうちとける、安息の日々 | 38(16@A,17),39(1,81,114),40 | ★源融パトロン説に関する補足説明 |
15 9/11(47分) 再生 ![]() |
誰とでもつながっていたい優男 | 41(16@A),42(25,28,37),43 | |
16 9/18(45分) 再生 ![]() |
離れゆく者に対し、優しさ全開 | 44,45,46(11),47 | |
17 9/24(68分) 再生 ![]() |
優しさのなかで締め括られる、優男シリーズ ★38-48段総集編 |
48(38,44,45,47) 38-47段を大まかに |
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第5ブロック 18 10/2(47分) 再生 ![]() |
多様な和歌のレトリック ★49-57段総集編 |
49,50,51,52,53(2,14),54,55,56,57(65B) | |
第6ブロック 19 10/10(68分) 再生 ![]() |
リセットして優男のイメージを払拭し、復活劇開幕 | 58(3,84),59(7,8,9@),60(13,源氏物語若菜上, 東屋) |
★章段を個別に読みたくない60段 (「対話講義X」) ★60段の都落ち女の全体のなかでの位置づけ (「遊ぼう第4回」) |
20 10/16(70分) 再生 ![]() |
あまりに完璧すぎる、復活劇第一幕 | 61(58,60),62(13,44,源氏物語東屋),63@A (14) |
★章段を個別に読みたくない61-63段、および、「末の世 の迷惑な増補」として読みたくない63段 (「対話講義X」) ★62段の都落ち女の全体のなかでの位置づけ (「遊ぼう第4回」) |
21 10/22(67分) 再生 ![]() |
苦悩の物語に初期化する、復活劇第二幕 | 64,65@AB(5,6A,57,117) | ★内面/外面論に組み込める65段 (「遊ぼう第3回」) |
22 11/6(44分) 再生 ![]() |
さすらう話がつづき、初期化もつづく | 66(8,9@,87,後撰集1244),67,68(116) | |
23 11/12(57分) 再生 ![]() |
斎宮に流れる紀氏の血 | 69@A(16@) | ★伊勢物語の書名と狩使本に関する補足説明 |
24 11/24(66分) 再生 ![]() |
伊勢の地は、決して陽の地ではない | 70(69@A),71,72,73,74,75 | |
25 11/28(75分) 再生 ![]() |
★58-75段総集編 | 58-75段を大まかに | |
第7ブロック 26 1/12(61分) 再生 ![]() |
翁として登場し、斜陽編がはじまる | 76(40,65@,81),77(59,78) | ★応天門の変の陰を読むかに関する補足説明 |
27 1/17(67分) 再生 ![]() |
政治的敗者の家には、陰がある | 78(59,77),79(65B),80(76,97,98,101) | ★応天門の変の陰を読むかに関する補足説明 |
28 1/19(72分) 再生 ![]() |
政治的敗者ゆえの、風流への逃避 | 81(1,14,15,39,40,76,77,79,80),82@AB (16@,38,69@A,117) |
★源融パトロン説に関する補足説明 |
29 1/21(64分) 再生 ![]() |
敬慕する親王や母にも、陰がある | 83@A(82@AB),84(58) | |
30 1/25(59分) 再生 ![]() |
仕事に支配される日々 | 85(82AB,83A),86 | |
31 1/28(60分) 再生 ![]() |
慰められても救われない兄の、やるせない現実 | 87@AB(33,66,101) | ★87段における一つの答に決めるべき箇所 (「対話講義Y」) |
32 1/30(79分) 再生 ![]() |
★76-87段総集編 | 76-87段を大まかに | |
第8ブロック 33 6/23(37分) 再生 ![]() |
時の経過とともに、諦め癖もつく | 88(87B),89,90(96@),91,92(65B),93 | |
34 6/26(41分) 再生 ![]() |
スケール小さく、こぢんまりと生きる | 94(90,93),95(5,76,89,100,源氏物語夕顔) | |
35 6/28(63分) 再生 ![]() |
ストレスの蓄積と八つ当たり的発散@ | 96@A(5,6A,90),97(76,101,万葉集431-433), 98(14,107@A,万葉集4231-4232) |
★遅い速度で歌を聞くべきことの補足説明 (「山部赤人動画講義Y前半 ・後半」) |
36 6/30(66分) 再生 ![]() |
ストレスの蓄積と八つ当たり的発散A | 99,100(76,89,93,95),101(77,81,87@,97,98) | ★官職の齟齬を許容する必要性 |
37 7/2(89分) 再生 ![]() |
★88-101段総集編 | 88-101段を大まかに | |
第9ブロック 38 8/23(72分) 再生 ![]() |
玄人読者限定の、暗号のような文体 | 102(69@,101),103(2),104,105(6@,65A),106 (76,81,95,古今集294) |
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39 8/25(61分) 再生 ![]() |
やがて当事者として嘆き恨むことに | 107@A(14,98),108,109,110,111,112,113 (96A) |
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40 8/28(84分) 再生 ![]() |
さらにすさんで、バランス感覚をなくす ★102-114段総集編 |
114(1,39,81,97,98,101) 102-113段を大まかに |
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第10ブロック 41 9/20(47分) 再生 ![]() |
ミヤビの誇りを失う主人公と、対照的な帝 | 115(14),116(15),117(65AB) | ★116段に見る精神的崩壊(「対話講義Z上」) |
42 9/26(60分) 再生 ![]() |
そして、イロゴノミのアイデンティティーも喪失 | 118,119,120,121,122,123(23AB,24,33,87B, 116) |
★123段に見る精神的崩壊(「対話講義Z上」) |
43=最終 9/30(62分) 再生 ![]() |
突然死ではなく、必然死 ★115-125段総集編 |
124(114,116,123),125 115-123段を大まかに |
★崩壊過程からつなぐ124段と必然死として読む125段 (「対話講義Z下」) ★「全段を講義し終えて」 |
◆あとがき◆ |
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全段を講義し終えて まず、この「伊勢物語全段動画講義」を視聴してくださったみなさまに、厚く御礼申しあげます。誠にありがとうございました。 初回収録に先立ち、私は、「つなぎ読みでなければならない理由」において、「組み立てることを楽しむキットとしてとらえられれば、伊勢は、実に頭を使わせてくれる面白い古典文学となり得ます」と前置きしました。章段どうしを積極的につなぎ合わせて深読みを仕掛けていけば、これまでにない面白さを得られる、というのが私の持論です。しかし、その持論は、まだまだ発展途上です。「伊勢物語対話講義V」で述べたように、相補論(つなぎ読みの正式名)を包括する可変論を発表しなければなりません。可変論とは、今ある第一相補論のほかに第二・三相補論を示すもので、挫折する可能性もあり得る難しいものです。「今なぜ伊勢物語なのか」では「伊勢物語全段動画講義」が「これまでの集大成になる」などと前置きしましたが、本当は、通過点にすぎないのです。 もちろん、平成15年9月に出した専門書『伊勢物語相補論』の第二部第二章「配列順伊勢物語相補論」第一〜七節に比べれば、さらに具体化できたぶん、進展してはいます。「対話講義U上・V上」で述べたとおり、章段どうしを深く広くつなぎ通した本格的な読みは「配列順伊勢物語相補論」が最初で、その論旨に注釈という肉づけをしたのですから、価値はあったかと思います。細かな訂正や付け足しもできました。区切って言えば、確かに、「これまでの集大成」ではあるのです。 けれども、やはり、集大成宣言はやめておきます。相補論の自在性は可変論を以て十全に証明される、と考えられる以上、今後は可変論にとり組む所存です。「配列順伊勢物語相補論」や「伊勢物語全段動画講義」あるいは「伊勢物語対話講義」等を無駄にしないためにも、頑張ります。第一、まだ集大成宣言なんてする年齢では全然ありませんし。 ただ、引きつづきすぐ可変論の動画講義化をはじめるのではありません。じっくりと可変論の構想を練り、着実に論文化して、おそらくそれで可変論ひいては伊勢の仕事を終えるつもりです。可変論の動画講義化については、可変論そのものができるか否かわからないので、現時点では何とも言えません。。 動画講義化すなわち周知活動という点では、「山部赤人動画講義」と「地歌動画講義」を含む動画講義が結構多くなってしまったため、Facebookページを利用して「田口尚幸古典文学動画選集」というセレクションをつくりました。私は「対話講義Z下」で述べたような各種周知活動をしてきましたが、まだまだ不十分と感じています。たとえば、赤人歌の表現方法を説く論なのに、あるいは、伊勢を成立論にとらわれずつなぎ読む論なのに、拙著・拙稿を引かない人が今後続出するとしたら、それが最もおそろしい、と私は考えます。その対策として、また新たな周知活動が必要となってくるかもしれません。 最後に、私事で恐縮ですが、妻と子に謝意を表したいと思います。 |
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「埋込版T(1-37段)・U(38-84段)・V(85-125段)」へ |
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1-37段を平易に解説したインターネット博覧会連載「伊勢物語で遊ぼう」へ | |
下記三冊の持論を特選した無料公開「伊勢物語対話講義」へ | |
単著専門書『伊勢物語相補論』・入門書『伊勢物語入門』 ・なぞり書き本『読めて書ける伊勢物語』 へ | |
姉妹編の無料公開「山部赤人動画講義」・「地歌動画講義」へ | |
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