「中高生・中高教諭を古典文学に近づけるための二つの具体的私案」


平成301021日の中古文学会秋季大会で、私はイニシヘ/ムカシの使い分けに関する研究発表を行ないますが、前日シンポジウムでは、古典教育の授業実践が報告されるそうです。大学生に対する授業実践なのか中高生に対する授業実践なのかはわかりませんが、質疑応答で挙手してもし当ててもらえたなら、この「中高生・中高教諭を古典文学に近づけるための二つの具体的私案」に書いたようなことを発言したく思っています(若者の古典離れ対策という点では、大学生より中高生・中高教諭に対する古典教育の方が重要でしょう)。ただし、発言する機会を得られない可能性も予想されます。その場合は、翌日の研究発表の最後に、本私案を文章化したものがネット上で閲覧可能なことを付言するつもりです。また、発言する機会を得られたとしても、時間は限られますし、後でまた文章で読める方がより理解できるでしょう。そこで、ここに記しおく次第です。

まず、具体的私案の一つ目としてあげたいのは、国語教育の論文、それも、ありがちではない下記のような内容の論文を書くことです。平成4年4月に愛知教育大学に赴任した私は、ずっと国語教育の授業を年1〜2コマ担当していたものの、国語教育の専門家として採用されたわけではなかったため、古典文学に関する著書・論文ばかり書いてきました。しかし、最近の教育大学の事情に鑑み、国語教育の論文も数本書いておいた方がいいと判断して、平成30年3月に「森忠明『その日が来る』を導入として用いる『国語科研究』『国語科教育』 − 教育大学で他専攻学生に小学校物語教材を講義する際の一私案を出しました(「国語国文学報」第76集)。これは、教科書にもう載っていない教材をとりあげた上に、流行りの用語も使っていない論文で、私が読んだことのある国語教育の論文とも似てなさそうななものでしたから、私自身、リポジトリのダウンロード数など全く期待していませんでした。ところが、信じ難いことに、3月下旬に閲覧可能となって以来ダウンロードされつづけ、約半年後には2万5千を超えて、まだ伸びていきそうな勢いです。ほかの教育系論文と比べても、驚異的な数と言えます。

では、なぜ、それほど数が伸びたのでしょうか。この拙稿では、「細部に注目しかつ論理的に説明する私見を示し、とらえどころがないとイメージされがちな国語のとらえどころを見せて、他専攻学生に早い段階でマイナスイメージを払拭してもらいたい、言い換えると、意識改革してもらいたい、ということを述べたが、以上の『全力で考え抜い』た具体例を提示することで、意識改革を確実なものとするレベルにまでもっていければ、誠に幸いである」と書きました。私は、「細部に注目しかつ論理的に説明する」あるいは「とらえどころがないとイメージされがちな国語のとらえどころを見せ」るという点が新鮮で、それが現場で真に必要とされているから数が伸びたのでは、と推測します。

今後の展開としては、今年度中に中高古典教材である赤人富士讃歌『万葉赤人歌の表現方法』で説いた表現方法論でとらえ(最下段参照)、来年度中に高校古典教材の『伊勢物語』諸章段『伊勢物語相補論』『伊勢物語入門』『読めて書ける伊勢物語』で提唱した相補論=つなぎ読みでとらえて、「山部赤人動画講義」「伊勢物語全段動画講義」といった動画講義の活用にも触れつつ、やはり、「細部に注目しかつ論理的に説明」して「とらえどころを見せ」る、新鮮で真に必要とされる論文を書くつもりです。今上記拙稿をダウンロードしてくれているのは、おそらく、現場の教諭でしょう。定番古典教材をとりあげる次稿・次々稿も大勢に閲覧されて現場に活かされれば、中高教諭ひいては中高生を古典文学に近づけることになるはず、と思っています(大勢に閲覧されるにはリポジトリで閲覧可能な雑誌に書くことが必須、と考えます)。

つづいて、具体的私案の二つ目は、高校生向けに学問分野を紹介する模擬授業等の場面で、一般的概説やトリビアではない、オリジナルな本質論をわかりやすく伝えることです。これは、学問分野紹介サービス「夢ナビ」を全国展開しているフロムページが発行する雑誌「教育人会議」No.3で述べたことですが、再度記事が載った同誌2015年春号では、会場で私の講義を聞いて感動し、研究室に入ってきた学生の生の声を知ることができます(2年連続で2人入ってきたのが珍しくて取材されたようですが、翌年もう1人入ってきました)。普通は、「高校生向けに自説を論じるなんて、難しいと思われるだけで、無意味どころか逆効果では」と考えるかもしれません。けれども、実際は反対で、オリジナルな本質論をわかりやすく伝えられれば、古典文学に近づけることができる、と言えます。さらに言うと、上記「夢ナビ」の30分枠講義「夢ナビLIVE 山部赤人はなぜ歌聖か」に付いているアンケート結果を見れば、難しい内容でも、それに興味をもてて喜ぶ受講生はいる、とわかります(この動画は、イニシヘ/ムカシの使い分けに関する私の研究発表ともかかわる内容なので、その意味でもご覧いただきたく思います)。

ちなみに、「夢ナビ」には3分枠講義「夢ナビTALK 前頭葉直撃の古典文学〜歌聖赤人の吉野讃歌」もあり、そこでは上記LIVEとはまた別の赤人歌をとりあげています。こちらの動画再生回数は、10月上旬現在、プロモーションムービーを除く全「夢ナビTALK」中第3位となっています(こちら)。また、回数のみならず、賛否を問う終わり近くのシーンも見てもらえれば、私見が他を圧する支持を集めたことがわかるでしょう。もちろん、こちらも、一般的概説やトリビアではなく、オリジナルな本質論をわかりやすく説いたものです。併せてご覧ください。

今や、「夢ナビ」をはじめ、高校生向けに模擬授業等をする機会は、増える一方です。そうした場面で、上記のような講義をしてみてはどうでしょうか。一般的概説やトリビアにとどまらない入魂の講義は、高校生を古典文学に近づけるいいキッカケになる、と私は考えています(動画講義もアップすれば一層効果的、と思われます)。

以上述べてきた二つの具体的私案は、かなり良好な結果を出したという裏づけを有し、あまり類を見ないものとも思われます。シンポジウムでどのような報告がなされ、質疑応答でどのような意見が出されるのか、現時点では全く予想できませんが、それがどのようなものであれ、この二つの具体的私案は周知しておくだけの価値があると考えます。一人でも多くの古典文学研究者が参考にしてくれたなら、そして、その結果一人でも多くの若者が古典文学を専攻してくれたなら、望外の喜びです

※赤人富士讃歌に関する上記拙稿「中高定番古典教材に関する動画講義も活用した具体的現状打開策−赤人富士讃歌で文法以外にも教えられる本質的かつ知的刺激に富む論の提供−」(「国語国文学報」第77集)は、こちら



研究発表で紹介する拙稿1〜4は、こちらからダウンロード・閲覧できます()。

動画はこちら(「山部赤人はなぜ歌聖か」「山部赤人動画講義T前半」「地歌動画講義」)。


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