前々回の第8回では、16段で1〜2段に原点回帰する円環性を述べました。
でもって、前回の第9回では、マイナーな17・18・19段を、16段あるいは16〜17段とつ
なぎました。今回とりあげる20段は、1〜2段に原点再回帰する章段です。 1段の舞台は、平城京=大和でした。同様に、20段の舞台も、大和です。 昔男は、都人として原体験の地に再度赴きます。大和に赴く点だけ見ても、円環してるでしょ。ちなみに、昔男は、7〜15段で東下りしてましたが、16段から帰京しています。 20段における昔男は、大和の女と気の利いた歌の贈答をします。大人の雰囲気です。 昔男は、18〜19段でニセモノ・ベツモノと言える都女に接してましたから、16〜17段で友達=紀有常のホンモノのミヤビに触れてるとすれば、なんかケガレた空気に触れちゃったように読めます。 そんな時に1段以来大和に赴くんですから、これは面白いですよ。だって、大和に住む女と言えば、ほかに1段の姉妹と23段の女がいますが、彼女たちはミヤビをもっています。東下り章段群なんかの田舎女たちがもつヒナビと比較対照し得る、立派なミヤビをね。20段の大和の女も、1・23段の女たちと一括りにしていいはず。とすれば、ミヤビに触れるという点でも、1段に円環することになります。そして、大和ではないけれどやはり没落の地に住む2段の女も、ミヤビ女です。ミヤビに触れる原点再回帰の円環性は、1段と20段にとどまらず、1〜2段と20段で見ないといけないでしょう。 どうですか。16段で1〜2段に原点回帰する円環性だけじゃなく、20段で1〜2段に原点再回帰する円環性まで読めるんです。うまくできてますねぇ、伊勢物語って。うまく読めるもんですねぇ、伊勢って。うまく読んだもんですねぇ、ぼくって。 そう、最終的編集者の意図なんて想定することないですよ(第5回参照)。 意図なのか偶然なのか結局わかんないんだから。とことん、どう読めるかに集中しましょう。 なお、この女の返歌を否定的に読む研究者もいるんですよ。 微妙な歌なんでそれならそれでかまわないし、その読みで他章段との関係を深めたり広げたりもできるんですけど、ここでは肯定的に読んでおきます。上記の構成論を成立させるためには、肯定的に読まないといけないからです。 構成論と読みを一体化して面白くするとは、そういうことだったんです。ぼくが提唱するつなぎ読み=相補論のあり方、わかってもらえたでしょうか。 ★ダイジェスト版はこちら。 ★伊勢の全原文は、「日本語テキストイニシアチブ」でご覧になれます(こちら)。 ★記事の無断転用は禁じます。 |
目次 | |||
はじめに | |||
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 |
第5回 | 第6回 | 第7回 | 第8回 |
第9回 | 第10回 | 第11回 | 第12回 |
第13回 | 第14回 | 第15回 | 最終回 |
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