伊勢物語で遊ぼう最終回

終わりの言葉


ぼくは 「配列順相補的解釈シリーズ」(平15・10おうふう刊の専門書『伊勢物語相補論』第二部第二章に当たる)を論文七本かけて完成させました。 この「伊勢物語で遊ぼう」には、二本目までのエッセンスが入っています。論文より平易にかみくだいた文体で書きました。ぼくの論文は比較的読みやすいんじゃないかとは思いますが、それでも専門的・学術的なものなので、一般の人には難しいでしょう。 だから、これを書いたんです。でも、どこまでできたやら。

ぼくのまわりの若手研究者や学生には、好評でした。しかし、 王朝文学に高級和風料理のような香りを求める人なんかは、「なんだ、この文体は」と思ったことでしょう。 それならそれでいいんですよ。インターネット世代の人のなかに、ひょっとして将来伊勢を研究あるいは愛読する人が出ててくるかもしれない。そういう人が読むキッカケづくりには、こんな文体の方が馴染みやすかったはずです。たぶんね。

また、「なんだ、この内容は」と思った人もいたでしょうねぇ。 はじめにに書いたとおり、ぼくは、「面白いこと考えるじゃん」と、読者の前頭葉をピリピリ刺激したかった。 知的に遊んでもらいたかった。そういうスタンスに理解を示さない人には、無縁のシロモノになったはずです。けど、はじめから読者層を絞り込んでるんで、それはもうしょうがないですよ。

それに、書いていて自分の考えがまとまってきたので、よしとします。 ぼくは、その後、書いてきた論文をまとめ、『相補論』を刊行しましたが、 「伊勢物語で遊ぼう」を書いていて考えがシンプルになり、よかったと思います(『相補論』の後で書いた入門書『伊勢物語入門 ミヤビとイロゴノミの昔男一代記』やなぞり書き本『読めて書ける伊勢物語 四十五首の恋心』にも、役立ちました)。 ひょんなキッカケではじまったこの試みも、結構プラスになったんですよ。

本当は持論のつなぎ読み=相補論をアピールするために最終の125段まで書くつもりでいたんですが、それだって結構労力要りますからね。一本目はじめの1段から二本目終わりの37段まで書いてキリもいいし、どうしても読みたい人は、もう三本目以降の論文を読む力が備わっているでしょうから、これで最終回とします。

もちろん、この「伊勢物語で遊ぼう」は本にならず、インターネット上のみのものとなりました(ただし、無料公開「伊勢物語全段動画講義」・「伊勢物語対話講義」と連動させることで、出版以上の効果が見込める、と思ってます)。

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目次
はじめに
第1回 第2回 第3 第4回
第5回 第6回 第7回 第8回
第9回 第10回 第11回 第12回
第13回 第14回 第15回 最終回
「ダイジェスト版」「伊勢物語対話講義」
単著専門書『伊勢物語相補論』入門書『伊勢物語入門』なぞり書き本『読めて書ける伊勢物語』
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